11月27日(金)気持ちの良い青空の下run!!ランラン♪走ろう、うたおう、奏でようの発表を無事終えることができました。本番、舞台に立つ子どもさん達一人ひとりの成長の過程が思い出され感動して胸が熱くなりました。
私のホームでは、1学期から継続して金子みすゞさんの『私と小鳥と鈴と』を詩っています。およそ1mサイズの紙に『私と小鳥と鈴と』の詩を書き、壁に貼りました。文字に興味を持ち始めた子どもさん達は、すぐに壁に貼ってある詩に気付き、「わ・た・し・と・こ・と・り・と・す・ず・と か・ね・こ・み・す・ず・・・」と一文字一文字ゆっくり読み始めました。何日かすると、かなこさんは「先生聞きよって~!!」と暗唱を始めましたではありませんか!!あっという間に詩を覚え、始めから最後までスラスラと読むことができ、とても驚きました。そんなかなこさんの姿を見て僕も私も!!と、先生(私)に聞いて欲しくて…自分だってできるんだ!ということを認めて欲しくて…私の前には長い行列が出来ることもしばしばです。誰かがお話している時は、そのお話が終わるまでは待ちましょうね。(他人(ヒト)の邪魔をしない)そんな普段からのお約束が習慣になり、僕も私も早く先生に聞いて欲しい!という気持ちを抑え、一列に並んで順番を待つ。という方法を子どもさん達自身で考えたのですね。
もちろん、初めから全員が暗唱できたわけではありません。列に並んでいるお友達の中にも「私と小鳥と鈴と 金子みすゞ 私が両手をひろげても…」あれ…?なんやったっけ?と困ったような照れくさいような表情を浮かべる子どもさんがほとんどです。だけど、私が初めての文字を伝えたり、ジェスチャーをしたりすると、あっ!!そうそう思い出したという表情でまた詩いはじめます。途中、詩を忘れてしまっても、途中で詰まってしまっても、決してそれは失敗ではありません。だって、僕もできるんだよ。誰かに聞いて欲しいよ。と思える意欲や積極性がぐんぐん育っているんです。一人ひとりを認め、共感し、たくさんたくさん褒めました。そして、「あと最後の「鈴と小鳥とそれから私」の所だけやね。」と、具体的にその子に応じた言葉かけをし、励ましました。
手を洗っている時、給食の準備や片付けの時、着替えをしている時、誰かが「私と小鳥と鈴と…」と、口ずさむと、ついつい私も。そして周りにいるお友達までも一緒に詩いだします。
詩を覚え、先生にたくさん褒めてもらうと、子どもさん達はそれだけでは満足いかなくなります。次は「お友達の前で発表したい!!」と…そこで朝の会では「私と小鳥と鈴と」の発表会を始めました。みんなの前で発表してみたい人?と、問いかけると手を挙げたのは8人程度。そこで、一番初めに詩に興味を持ち暗唱を始めたかなこさんにトップバッターをお願いしました。
自分で前に踏み台を準備し、堂々と発表することができました。次に同じ問いかけをしてみると、ほとんどのお友達が手を挙げました。(挙げていないのは3人)お友達の前に立つと緊張して詩を忘れてしまったり、まだ覚え切れてなくて詰まってしまったりしても、今度は私ではなく、座って聞いているお友達が初めの文字を伝えたりジェスチャーをしたりしてお友達に教えてあげる。そして終わった後には「たかしくんすごーい!!」「あと少しやね!!」と褒めたり励ましたり拍手をしたり…そんな子どもさん達の姿を見て、これ、私(保育者)がしてたこと…と心が温かくそして微笑ましく思いました。大人の様子をよ~く見て模倣し真似をして成長しているんですね。一度発表したお友達は自信を持ち、何度も何度も手を挙げます。しかし、3人だけ何日も過ぎても手を挙げません。私と1対1で向き合うと上手に暗唱できるのに…もったいない…。そこで、ある日発表したいお友達ではなく前の友達から順番に一人ずつ発表していくことにしました。そうすると、手を挙げなかったお友達も自分の順番が来ると嫌がることなく前に出て少し小さな声ではありましたが、最後まで発表することができました。見ているお友達も、この3人が初めて発表したのを分かっているんです。「はじめてやね。上手にできたね。すごい、すごい」とお友達に褒められ、はにかんだ表情。だけど、皆の前に立ち発表できた。そして褒められた。という経験が自身になり、次の日からはその3人も手を挙げるようになりました。あてて欲しくててを挙げて「先生、先生っ!!」とアピールする程です。引っ込み思案な一面が積極性に変わった瞬間です。
このような子どもさん一人ひとりの成長をお家の方にも見て欲しいと思い、作品展で『私と小鳥と鈴と』を発表することにしました。椅子を並べてステージを作り、並び順、入場から練習しました。あるお友達は、興味・関心、好奇心が旺盛で前に立つと保育者の合図、指揮が見れません。悪く言えばキョロキョロして落ち着きがない…。また、別のお友達は、大勢の人から見られているということを強く意識し、ゴソゴソと手を動かしたり、口が開いていなかったりします。
また、音楽(CD)のない暗唱では呼吸、タイミングを合わせるのはとても難しいことでした。その都度その都度、注意を促したり、前で指揮をする私自身のやり方を子どもさんが興味を持てるように創意工夫してみたりするうちに少しずつ少しずつ落ち着いて私の合図・指揮を見てくれるようになりました。すると、自然と私と子どもさん達の呼吸が重なり、タイミングが合うようになりました。最近の練習では保育者の合図や指揮を見ること呼吸を合わせること…まるで初めからできていたかのように感じるほどです。一回一回の練習を通じて一人ひとりの成長の過程が思い出され毎日毎日胸が熱くなりました。
園長先生から、最後は手話でご挨拶をするようにアドバイスをいただき、子どもさん達に、普通に挨拶をするのと手話でご挨拶するのとどっちがいいかな?と問いかけると、「手話でしたい!」「手話のほうがかっこいい」という子どもさん達がたくさんいました。その中でもなつこさんは「耳の不自由な人もきとるかもしれんもんね。」とつぶやきます。夏の祭典で手話で唄ったお友達の大好きな「にじ」のうた。手話がどんな時に役立つのかしっかり覚えていたんですね。
さあ、いよいよ、発表の日が近くなりました。しかし、当日欠席する子どもさんが出てしまいました。このことをお友達に伝えると、とても残念そうな表情を浮かべました。しかし、その子どもさんのお家まで届くぐらい元気に詩おうや!!と。他人を思いやる心、優しい心が芽生えているのですね。子どもさんの成長にとてもとても感動しました。人前に出るのが苦手なお友達、今までの練習で自信をつけたのか、それとも仲良しのお友達のために…と使命を持ったのか…?お友達に心配りが出来るほどに育っているのです。このように子どもさんの自立した姿が見えてとても嬉しい出来事でした。たとえ、本番お休みしたとしても1学期から「私と小鳥と鈴と」を詩い一緒に成長し自立しているホームの一員なのです。
本番も一人ひとり、堂々として前に立った時にはお家の人ではなく私の顔、合図、指揮をしっかりと見てくれました。その瞳はキラキラと輝いています。元気な声で可愛らしい笑顔で…青々とした大空に、お友達のお家まできっと、きっと子どもさん達の歌声や思いが届いたことでしょう。最後のご挨拶の前にこうじ君の「どうも」と元気に響き渡る声は自信と優しさに満ち溢れていたした。
私も当日、園長先生からホームの発表の最後に一言保護者の方へお礼を伝えるように言われていたのに、今までの私自身の思いとか子どもさんの姿とか…すごくすごく感動して感極まって言葉になりませんでした。
一人ひとり、みんな違っていて一人ひとりの心豊かな素晴らしさを見つけました。(発見)くたに幼稚園の特色でもあります、一人ひとりを大切にこれからもその子の持っている素晴らしいところ(能力・脳力)を魅きだし伸ばしていけるように、そして自分だけでなくお互いがお互いを認め合えるような人になれるようにと…願いを込めて(育てる・education)「私と小鳥と鈴と」の詩をうたいました。
本当にありがとうございました。